債務整理|推定計算による過払い金算出の攻防

バディ
被告
ハドソン

主文

1 被告は原告に対し,28万8399円及び
(1) 内金10万9440円に対する平成11年5月8日から
(2) 内金14万7075円に対する平成18年11月16日から
(3) 内金3万0000円に対する平成19年11月21日から
いずれも支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告の,その1を被告の負担とする。
4 この判決の第1項は仮に執行することができる。

事実及び理由

第1 請求の趣旨

1 被告は原告に対し,68万3699円及び
(1) 内金37万8627円に対する平成18年11月16日から
(2) 内金30万0000円に対する平成19年11月21日から
いずれも支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 仮執行宣言

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第2 原告の主張

1 原告は貸金業者である被告との間で,別紙第1「利息制限法再計算シート」(以下単に「計算書1」という。)の「年月日」欄記載の各年月日に被告から「借入金額」欄記載の金額を借り入れ,又は「弁済額」欄記載の金額を返済して金銭消費貸借取引(以下「本件取引」という。)を継続してきた。
2 取引内容の推定方法
原告は,平成7年3月以前の取引については原告の記憶と甲第3号証から計算書1記載のとおり推定されると主張し,その方法を次のとおり主張する。
(1) 1 甲第3号証に記載された被告作成の入金履歴には,原告がカードを利用してなした立替払契約に対する弁済の入金額と金銭消費貸借に対する弁済の入金額が混在している。
立替払契約では利息の発生が予定されていないから,この入金履歴で共通の連番で管理されている取引中,充当先内訳として利息が記載されず元本のみの返済で支払が完了している連番の取引(立替払取引)を除いて,残りの取引から本件取引の内容を推定した。(この点は被告の推定方法と一致している。)
(2) 具体的には甲第3号証に記載された入金日,元本,利息として記載された数字を元にして,貸金業者は借入月の翌月払いとしているのが一般的であることから入金日の前月15日を借入日とした。
(3) 甲第3号証の連番は5003から始まっているところ,平成4年12月4日に過入金の記載があることからそれ以前にも連番5002,5001の取引があるものとして平成4年7月15日に5万0000円,同年8月15日に5万0000円の借り入れがあったと推定した。
3 本件取引の約定利率はいずれも利息制限法1条1項で定める制限利率(以下単に「制限利率」という。)を超えるものであった。
4 本件取引の各貸付及び弁済は全体として一個の連続した貸付取引であるから,原告が弁済した金員のうち制限利率に引き直して計算した利息(以下「制限利息」という。)を超えて利息として支払われた部分(以下「制限超過部分」という。)を元本に充当して計算すると原告は借入残高を超えて弁済をしたことになり,過払い金が発生する。
5 被告は貸金業者であり,制限利息を超える利息であることを知りながら利息金の弁済を受けていたから,この過払い金について悪意の受益者である。
6 そこで,過払い金に過払い金発生のときから悪意の受益者が支払うべき年5分の割合による利息を付し,これらをその後に発生した原告の新たな借入に係る債務に充当してもなお過払い金が残存しているから,被告はこれらの過払い金を法律上の原因なく利得している。その額は計算書1の計算結果のとおり平成18年11月15日時点で過払い金元金37万8627円となり未払利息金は5072円となる。
7 仮に,本件取引が2個の取引であったとしても,一方の借入金債務について弁済により発生した過払い金は,弁済当時存在する他の借入金債務に充当されることになるから充当計算の結果は同様の結論となる。
8 予備的に,被告が主張するように本件取引の基本契約が平成4年9月25日に締結されていた場合,本件取引の取引日,貸付金額,返済金額は,別紙第2「利息制限法再計算シート」(以下単に「計算書2」という。)記載のとおりとなり,その結果平成18年11月15日時点で過払い金元金37万4525円と未払利息金5013円が発生していることになる。
9 不法行為
原告は,原告代理人に債務整理を委任し,同人を通じて平成18年12月12日被告に対し契約開始からの全取引履歴を開示するように求めたが,被告は取引履歴を開示しなかった。
原告は原告代理人を通じて平成19年1月16日被告に対し再度全取引履歴の開示を求めた。
原告と被告は遅くとも平成4年から取引を行っているにもかかわらず,被告は平成19年1月30日に平成6年9月22日以降の取引履歴を開示したに止まり,未だ全取引履歴を開示していない。
以上の取引履歴の不開示は不法行為を構成する。原告は,被告のこの不法行為により,債務整理をする前提としての債務額の確定ができず,円滑な債務整理を妨害されるという極めて不安定な状況に置かれ,多大な精神的苦痛を被った。この精神的損害の慰謝料は20万0000円を下らない。
また,原告は被告の前記不法行為により本件訴訟の提起を強いられることになり,10万0000円を下らない弁護士費用負担の財産的損害を被った。
よって,原告は被告に対し,不当利得の返還として過払い金元金37万8627円,平成18年11月15日までに発生した過払い金に対する悪意の受益者が支払うべき民法所定年5分の割合による利息金5072円及び過払い金元金37万8627円に対する平成18年11月16日から支払済みまで年5分の割合による利息金並びに不法行為に基づく損害賠償として30万0000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年11月21から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第3 被告の主張

被告は請求棄却の判決を求め,次のとおり主張する。
1 原告と被告との間で金銭の借入と返済をしてきたことは認めるがその取引内容は2以下に主張するとおりである。
ただし,平成7年4月以降の取引日及び取引金額は原告主張の年月日及び金額と同一である。
過払い金があった場合被告がその不当利得について悪意の受益者であったことは争わない。
原告が,原告代理人に債務整理を委任し,同人を通じて平成18年12月12日被告に対し契約開始からの全取引履歴を開示するように求めたことは認めるが,被告が契約開始からの取引履歴を保管しているにもかかわらず,開示していないとの事実は否認する。被告は保管している全取引履歴を開示済みである。
その余の事実は否認し,法律上の主張は争う。
2 2個の個別契約
本件取引は,当事者間の平成4年9月25日締結のAカード契約(契約番号a,旧契約番号b,旧契約番号c)(以下この契約に基づく取引を「第1取引」という。)と平成6年9月21日締結のBカード契約(契約番号d)(以下この契約に基づく取引を「第2取引」という。)の2つの契約に基づきそれぞれ別個になされた取引である。
各カード契約は,それぞれ別個の時期に原
告から申込がされ,被告はその都度与信をした上で原告に各別にカードを交付している。
さらに,各カード契約は契約番号,カード機能,利率,返済方法等内容が全く異なるものであり,個々の特質を備えた別個のカード契約である。
3 被告主張の本件取引内容
(1) 第1取引
第1取引は,被告が復元した取引履歴によれば別紙第3「計算書3」(以下単に「計算書3」という。)記載のとおりである。
その結果第1取引による原告の過払い金は,平成11年5月7日時点で元金10万6050円と未払利息金2816円となる。
(2) 第2取引
第2取引は,別紙第4「計算書4」(以下単に「計算書4」という。)記載のとおりである。
その結果第2取引による原告の過払い金は,平成18年11月15日時点で元金11万6471円と未払利息金2万9056円となる。
(3) 平成7年3月以前の取引内容
被告では平成2年1月以降の入金分については,弁済日並びにその弁済額が各貸付(カードを利用するごとに採番された「連番」が付された各別個の貸付)にどう充当されるかの充当額及びその元利金の内訳をコンピュータで管理しており,その入金履歴情報画面から貸付金額及び貸付日を復元することが可能である。
第1取引は平成4年9月25日に契約されているから,すべての入金履歴が残っており,これにより貸付金額及び貸付日を復元することが可能でありその方法は以下のとおりである。
なお,第2取引については全取引履歴が開示されており,その内容は乙第3号証記載のとおりであって,計算書4の「年月日」,「借入金額」及び「弁済額」欄に記載したとおりとなる。
ア被告では,カード契約に基づき繰り返される個々の貸付ごとに4桁の連番を付して管理しており,顧客からの返済があれば,返済金がどの連番で管理されている貸付分にいくら充当されたかが入金履歴画面に記録されている。
平成7年3月以前の第1取引の入金履歴は乙第1号証の1及び2の入金履歴画面に含まれており,連番5003番から5067番までの連番が付された取引中利息への充当の記載がない取引(立替払取引)を除いた取引である。(この点は,原告の推定方法と一致している。)イ乙第1号証の1及び2中同一連番が付された弁済の元本額の合計がその連番が付された貸付取引の元本額(貸付金額)であり,その連番が付された取引に最初に充当された弁済金の入金日の前月を借入月とする。
その理由は,被告のカード契約の弁済金請求方法が,毎月末日までにカードを利用して借り入れた分について翌月27日までに支払うことになっているからである。
ただし,乙第1号証の1,2中弁済が27日以降に遅れてなされているものは,その直前の27日が最初の弁済期日であるから,借入月はそのさらに前月となる。
そして,被告では毎月28日から翌月27日までを1か月として月利計算しているので,貸付日が1日から27日までの場合は貸付日の翌日から27日までを期間利息として日割り計算してその後の1か月分の利息と合わせて最初の弁済日(翌月27日)に弁済し,貸付日が27日から月末までの場合は,28日から翌月27日までの月利から28日から貸付日までの日割利息(期間利息)を控除して最初の弁済日である翌月の27日に弁済することになる。
以上の関係は次の数式で表される。
期間利息額=1回目の利息充当額−1か月の利息額(貸付元本×貸付利率÷12)
期間利息額=貸付元本×貸付利率÷365×(27−貸付日)
したがって,貸付日は次の数式で求められる。
貸付日=(27×貸付元本×貸付利率−365×期間利息額)÷(貸付元本×貸付利率)
以上によれば,第1回目の約定弁済日の前月の上記計算による貸付日が当該貸付金元本額を貸し付けた日となる。
なお,本件取引当時の第1取引の約定利率は年28.8パーセントの割合であった。
この復元計算を個別貸付にあてはめたものが乙第2号証である。
復元計算の結果平成7年3月以前の第1取引は計算書3の「年月日」,「借入金額」及び「弁済額」欄に記載したとおりとなる。
4 不法行為について
(1) 被告における取引履歴の管理について
被告は顧客に対してカードで貸付をする都度,コンピュータ上に当該貸付の貸付日,貸付額,貸付利率,返済方法,当月請求額,残存元本額等(以下これらを「貸付情報」という。)の契約内容を「カード計算書」として記載し,個別の貸付ごとに,顧客に対する請求を管理している。
各個別の貸付情報は当該貸付が完済されるとその都度完済後2か月でコンピュータ上から削除する。この場合毎月コンピュータ上のカード計算書をマイクロフィルムに転写し,このマイクロフィルムを転写直後の4月1日を基準として会計年度で10年間保存し,その後廃棄する取り扱いをしている。例えば,平成17年5月10日現在であれば平成7年4月分以降のカード計算書が保存されていることになる。
被告は,以上のように貸金業の規制等に関する法律(現貸金業法,以下「貸金業法」という。)19条及び同法施行規則17条に沿った帳簿の保存をしているのであり,被告は,保管していた取引履歴をすべて開示しているから,廃棄により一部の取引履歴が開示できなくとも違法ではない。
(2) 原告には,取引履歴が開示されなかった事により侵害された利益に対して財産的価値以外に考慮に値する主観的精神的価値を認めていたような特別の事情はないから,精神的損害は存しない。

第4 当裁判所の判断

1 本件取引の個数
甲第1号証及びこれに対応する乙第3号証に記載された取引(第2取引)は毎月27日頃に1万2000円を弁済し,6月期と12月期には6万2000円を弁済するという定額弁済方式の取引内容であり(円単位の端数が弁済されている場合があるのは,上記弁済すべき金額に時間外手数料又は遅延損害金等が付加されているためである。),その弁済金の充当先が表示されている乙第3号証によれば,甲第1号証の取引は利息の支払いを伴う貸金取引のみであり,定額の弁済金が多数口の借入金の利息及び元本に割り振られて円単位の端数金額で弁済充当されている。
そして,乙第3号証によれば,同一連番が付された個々の貸付金について見ると元利金を含めた全額の弁済が終わるまで相当の期間が予定されている。
以上によれば甲第1号証の取引は多数の貸付をまとめて毎月定額を弁済する約定の基本契約に基づく取引であると認めることができる。
これに対し,甲第2号証及びこれに対応する乙第1号証の1及び2に記載された取引(第1取引)を検討すると,乙第1号証の1及び2に記載された原告の弁済には,貸金の返済のほかに利息の発生がなく元本の1回の返済で完了している立替払金の返済と見られる取引が含まれており,弁済時期は取引前半こそ27日ころであるがその後は一定せず,弁済金額は取引前半は2万円台と8万円台であるがいずれも1円単位の端数金額の入金であり,後には前回の弁済後の借入金額の合計に利息又は遅延損害金と推認される端数金額を加えた額と見られる金額を不定期に弁済していることが認められる。
そして,その弁済金の充当先が表示されている乙第1号証の1及び2によれば,これらの端数金額の弁済金は,数口の別個の借入金の元本と利息に充当されており,元本にはほぼ毎回1万0000円単位で充当されているのに対して利息には円単位で充当されており,また,乙第1号証の1及び2の取引には,複数回の弁済により分割弁済されていると推認される取引(複数回同一連番が表示されている取引)も例外的に存在するが,ほとんどの貸金取引が1回の弁済で借入金が全額弁済されていることが認められる。
また,証拠によれば,本件取引は被告において,各別の2つの契約番号で,残高の管理がなされており,管理店,審査店も各別であることが認められ,以上の事実に弁論の全趣旨を併せ考えると,本件取引は被告が主張するように甲第1号証に記載された取引(被告がBカード契約によると主張する第2取引)と甲第2号証に記載された取引(被告がAカード契約によると主張する第1取引)の2個の異なる基本契約に基づくそれぞれが一連の取引であると認められる。
2 平成7年3月以前の取引内容
甲第1号証記載の第2取引の内容については当事者間で争いがなく,甲第2号証記載の第1取引中,平成7年3月以前の取引について,原告は原告本人の記憶と甲第3号証から計算書1記載のとおり推定されると主張し,その方法を前記第2の2のとおり主張する。
しかしながら,原告の推定方法は貸付日をいずれも15日とする仮定の上に成り立っており,その余の原告の推定方法について検討するまでもなく,この方法により平成7年3月以前の取引内容を認定することはできない。他にこの部分の取引が原告主張の内容であると認める証拠はない。
ところで,計算書3に記載された被告主張の平成7年3月以前の取引内容と計算書1に記載された原告主張の同時期の取引内容を比較すると,被告は,平成7年3月以前にも原被告間で計算書3記載の取引がなされていたこと,つまり,少なくとも原告主張の日に原告が主張する計算書1記載の金額又はそれ以上の金額を弁済していたことを自認している。
その上で被告は,計算書3に記載された平成7年3月以前の貸付があったと主張し,その貸付日及び貸付金額の復元方法を主張する。
被告主張の復元の計算方法それ自体は合理性があるものと認められ,その前提となる被告における貸付の管理方法,入金日,入金額,入金の各貸付への充当額,弁済日の取り決め,利息計算の方法特に貸付日から最初の弁済日までの利息計算の方法,約定利率等の事実については,乙第1号証の1,2,乙第2号証及び弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。
以上によれば,平成7年3月以前の原被告間の取引の内容は,被告が復元した計算書3の内容であったと認めるのが相当である。
したがって,本件取引が一連1個の取引であることを前提とした原告の予備的主張(計算書2の取引内容)も理由がない。
3 過払い金の計算
以上の認定した取引内容に従い,本件取引を2個の各別の基本契約に基づいた一連の取引であるとして,計算書3及び4の取引内容を前提に,原告が弁済した金員のうち制限超過部分を元本に充当して計算し,過払い金が発生したときは,過払い金発生のときからこれに悪意の受益者が支払うべき年5分の割合による利息を付し,これらをその後に発生した原告の新たな借入に係る債務に充当して計算した結果は,第1取引については別紙第5「計算書5」記載のとおり平成11年5月7日現在で過払い金元金10万9440円及び利息金142円が,第2取引については,別紙第6「計算書6」記載のとおり平成18年11月15日現在で過払い金元金14万7075円及び利息金1742円が発生していることになる。
なお,被告は過払い金に対する悪意の受益者が支払うべき利息は,その後の原告の新たな借入金に充当されず,別個に残存することを前提にその合算額を未払利息金とする計算方法を採用しているが,同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けとその返済が繰り返される金銭消費貸借取引においては,借主は,借入れ総額の減少を望み,複数の権利関係が発生するような事態が生じることは望まないのが通常と考えられることから,過払い金に対して発生した利息金についても,過払い金元本と同様にその後に発生した新たな借入金に充当されると解するのが当事者の意思解釈として相当である。
また,原告は,仮に本件取引が2個の取引であったとしても,一方の借入金債務について弁済により発生した過払い金は,弁済当時存在する他の借入金債務に充当されることになるから充当計算の結果は一連1個の取引として計算した場合と同様の結論になると主張する。
しかしながら,同一当事者間で締結された別個の基本契約に基づく金銭消費貸借取引の一方で発生した過払い金は,特段の事情がない限り,当然には他の基本契約に基づく金銭消費貸借取引で生じた借入金の弁済に充当されることはないと解すべきであるところ,原告は特段の事情について何らの主張立証をしないからこの主張は理由がない。
4 不法行為の主張について
貸金業者は,債務者から取引履歴の開示を求められた場合には,その開示要求が濫用にわたると認められるなど特段の事情のない限り,貸金業法の適用を受ける金銭消費貸借契約の付随義務として,信義則上,保存している業務帳簿に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負い,それは保存期間を経過して保存しているものを含むものと解すべきである。
そして,貸金業者がこの義務に違反して取引履歴の開示を拒絶したときは,その行為は,違法性を有し,不法行為を構成するものというべきである。
原告が,原告代理人に債務整理を委任し,同人を通じて平成18年12月12日被告に対し契約開始からの全取引履歴を開示するように求めたことは当事者間に争いがなく,証拠によれば,平成6年9月22日以前の被告の貸付履歴については開示されていないことが認められる。また,原告の取引履歴の開示要求に上記特段の事情があったことを認める証拠もない。
被告は,本件取引が2つの基本契約に基づくカード取引であると主張するが,同取引が終了したことを認めるに足る証拠はなく,また,被告が主張するように本件取引履歴を被告が廃棄したことを認めるに足る証拠もない。
そうすると,被告の取引履歴の不開示は不法行為を構成すると言わざるを得ない。
本件においては,その不法行為の態様,違法性の程度等を考慮して,慰謝料は3万0000円が相当である。
弁護士費用については,本件訴訟の争点が取引履歴のみではないこと,簡易裁判所においては当事者本人でも訴訟行為を行えるように,民事訴訟法上種々の特則が設けられていることから,被告の取引履歴不開示との間に相当因果関係を認めることはできない。
以上によれば,原告の請求は,被告に対し,第1取引から生じた過払い金元本10万9440円,第2取引から生じた過払い金元本金14万7075円及び不法行為による慰謝料金3万0000円の合計金28万8399円並びに内第1取引から生じた過払い金元本10万9440円に対する平成11年5月8日から,内第2取引から生じた過払い金元本金14万7075円に対する平成18年11月16日から,いずれも支払済みまで年5パーセントの割合による利息金及び内慰謝料金3万0000円に対する平成19年11月21日から支払済みまで年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるがその余は理由がない。

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本人訴訟の場合、貸金業者側の反撃に遭い、後記の民法704条に基づく利息を付さない和解に追い込まれるケースが多いといわれ、また、後掲のように、取引履歴の不開示があったり、充当関係で複雑な事案であったりすると、本人訴訟で法律上正しい金額の返還を受けることは極めて困難なのが現実。

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